あたしは、一つの疑問を香織にぶつける。


「香織、応援してくれてるけど、辛くないの…?まだ雄平のこと…」


香織はきっと、まだ雄平のことが好きだと思う。


それなのに、こうしてあたし達がうまくいくように、背中を押してくれる。


辛くないはずがない。


香織は一瞬だけ、眉を下げて泣きそうな顔をした。


その表情が、全てを物語っている。


けれどすぐに、意地悪な笑みを浮かべ、冗談めかして言う。


「このあたしが、これだけアタックしてなびかない男だよ?どうせ変な趣味でもあるんだって」


聞き捨てならない言葉に、あたしも笑って反抗する。


「ひどーい!友達の好きな人に向かって!」


「絶対そうだって!」


笑い合うこの時間がとても楽しくて、あたしは密かに、幸せを感じていた。


香織とこうして無邪気に笑い合える日が、再び訪れることはないのではないかと思っていた。


でも、あたし達は本当の自分を見せ合って、以前よりずっと、素直に笑い合えるようになった。


もし雄平との恋がうまくいかなかったとしても、あたしは香織という親友がいれば、それでいい気がした。


こんなことを香織に言ったら、きっと『ぬるいよ!』と言われるだろうから、内緒にしておくけれど。