雄平は二つ目を口に入れて、
「ほら、杏奈も食べてみて」
三つ目を、あろうことか、あたしの口に押し込んだ。
突然のことに驚き、次の瞬間、状況を把握して顔が熱くなる。
雄平の指からあたしの口に運ばれたそのチョコレートを、ぎこちなく、もぐもぐと噛みしめる。
優しい甘さが口の中に広がり、名残惜しい気持ちとは裏腹に、すっと溶けていった。
「ね、おいしいでしょ?」
雄平が、いたずらっ子みたいな目で、あたしを覗き込む。
「おいしい…」
小さく頷く。
あたしの顔は、きっと真っ赤だ。
「ありがとな」
雄平はもう一度、あたしの頭に手を置いた。
そして、いつもみたいにくしゃくしゃとするのではなく、優しく髪をなでてくれた。
あたしはうつむいたまま、その温もりを感じる。
涙が出そうになる。
口の中の甘さと、雄平の手のあたたかさが、優しく心に染み入ってくる。
雄平を好きになってよかったと、強く思った。



