きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




雄平は二つ目を口に入れて、


「ほら、杏奈も食べてみて」


三つ目を、あろうことか、あたしの口に押し込んだ。


突然のことに驚き、次の瞬間、状況を把握して顔が熱くなる。


雄平の指からあたしの口に運ばれたそのチョコレートを、ぎこちなく、もぐもぐと噛みしめる。


優しい甘さが口の中に広がり、名残惜しい気持ちとは裏腹に、すっと溶けていった。


「ね、おいしいでしょ?」


雄平が、いたずらっ子みたいな目で、あたしを覗き込む。


「おいしい…」


小さく頷く。


あたしの顔は、きっと真っ赤だ。


「ありがとな」


雄平はもう一度、あたしの頭に手を置いた。


そして、いつもみたいにくしゃくしゃとするのではなく、優しく髪をなでてくれた。


あたしはうつむいたまま、その温もりを感じる。


涙が出そうになる。


口の中の甘さと、雄平の手のあたたかさが、優しく心に染み入ってくる。


雄平を好きになってよかったと、強く思った。