きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




やばい、と思った。


雄平が困っている。


どうしよう。


『義理だよ』って、笑った方がいい?


「あ…あー!そうか、今日、そっか。忘れてた」


雄平が何かひとりで納得していて、あたしも思わず雄平の顔を見る。


「バレンタイン?」


そこには、照れくさそうに笑う雄平がいた。


「杏奈、俺にくれるの?」


強がる余裕もなかった。


こくん、と頷くと、


「ありがと」


雄平は、あたしの手から包みを受け取る。


そして、くしゃっとあたしの頭をなでてくれた。


「かわいいとこあるじゃんっ」


照れくさくて、されるがままのあたし。


乱れた髪を整える余裕もなく、ぎくしゃくした手つきで、置いてあった缶コーヒーを再び手に取る。


「今食べていい?」


「い、今?」


返事を聞く前から、雄平はリボンをといて包みを開ける。


箱の中には、一口サイズのチョコが六個。


その一つ取って、口に入れる。


「うまい!」


にっこり笑うその顔を見て、思った。


あたし、あげてよかった。


雄平にチョコをあげて、よかった。