ずずっ、と音をたてて、雄平はコーヒーをすする。
「なんとか間に合ってホッとした。ま、油断はできないけど」
あたしも缶を両手で包んだまま、一口飲む。
ミルクの香りが広がる。
「あ…」
雄平の横顔を見て、あたしはようやく気付く。
「ん?」
「あ、えーと…あったかくておいしいなーと思って」
そうごまかしたけれど、本当は違う。
「寒いもんなぁ」
雄平はブラックコーヒーを飲んでいた。
それなのに、あたしにはミルク入りを買ってくれた。
あたしがミルク入りしか飲めないことを、知っていてくれた?
偶然?
どちらでもうれしいけれど。
でも、もしかして、
「雄平、甘いものダメなんだっけ?」
チョコを渡そうと思ってるのに。
「いや、めっちゃ好き。あ、これ?コーヒーはブラックって決まってんの。俺って大人」
自分で言って、くくく、と笑う。
「じゃあさ…」
あたしは缶を横に置いて、バッグから小さな包みを取り出す。
「これ…」
雄平の顔を見ずに、腕を伸ばして、包みだけ差し出す。
「え…?」
雄平が、少し戸惑うのがわかった。



