きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




ずずっ、と音をたてて、雄平はコーヒーをすする。


「なんとか間に合ってホッとした。ま、油断はできないけど」


あたしも缶を両手で包んだまま、一口飲む。


ミルクの香りが広がる。


「あ…」


雄平の横顔を見て、あたしはようやく気付く。


「ん?」


「あ、えーと…あったかくておいしいなーと思って」


そうごまかしたけれど、本当は違う。


「寒いもんなぁ」


雄平はブラックコーヒーを飲んでいた。


それなのに、あたしにはミルク入りを買ってくれた。


あたしがミルク入りしか飲めないことを、知っていてくれた?


偶然?


どちらでもうれしいけれど。


でも、もしかして、


「雄平、甘いものダメなんだっけ?」


チョコを渡そうと思ってるのに。


「いや、めっちゃ好き。あ、これ?コーヒーはブラックって決まってんの。俺って大人」


自分で言って、くくく、と笑う。


「じゃあさ…」


あたしは缶を横に置いて、バッグから小さな包みを取り出す。


「これ…」


雄平の顔を見ずに、腕を伸ばして、包みだけ差し出す。


「え…?」


雄平が、少し戸惑うのがわかった。