教室の後ろのドアを開けて、そっと中に入る。
ゆっくり雄平に歩み寄って肩をつつくと、びっくりしたように顔を上げた。
廊下を指差して手をこまねく仕草を見せると、雄平は席を立った。
教室の前の廊下は声が響くから、少し歩きながら言う。
「ごめんね、邪魔して。ちょっとだけ、いい?」
雄平はうんと大きく伸びをして、
「そろそろ休憩しようと思ってたとこ。コーヒー買いに行っていい?」
雄平が階段の下の自動販売機を指差すので、二人並んで階段を下りる。
「こないだの模試、判定どうだった?」
自動販売機にお金を入れながら、雄平が言う。
「北高?Aだったよ」
北高校は、あたしが狙う、市内でトップの公立高校だ。
ガコン、と缶が落ちる。
「さすが」
雄平はそう言いながら、取り出した缶をあたしに手渡す。
「え?」
戸惑っていると、
「え?飲まない?」
雄平がそう言うので、
「飲む!」
思わず大きな声で答えると、雄平は楽しげに笑った。



