チョコレートを贈ることは、すなわち愛の告白。
義理だと言って押しつけてしまおうか、と考えていると、
「義理だとか言っちゃだめだからね、絶対!」
香織にきつく念を押された。
何もかもお見通しの香織。
迎えたバレンタインデーの放課後、香織に送り出され、チョコの入った小さなバッグを抱えて、あたしは雄平を探す。
受け取ってもらえなかったらと考えると、足がすくむ。
香織は「大丈夫」だと言ってくれるけれど、もし駄目だったら、あたしは立ち直れないかもしれない。
雄平は書道教室にいた。
放課後は受験生の自習用に開放されていて、いつも机はいっぱいになっている。
雄平は、一番後ろの窓側。
いつからか勉強に本腰を入れ始めた雄平は、毎日一番最初に書道教室に行って勉強を始めていた。
毎日、意味もなくこの廊下を通って、中を覗き見る。
一瞬だけ見える、雄平の真剣な横顔に、ドキドキしていた。
ストーカーのようなあたし。
自分でもあきれる。



