雄平への恋が、動き出す。
ぎこちないながらも度々会話を重ね、徐々に以前のように戻ればいいと思っていた。
そんなあたしを、
「何のんきなこと言ってんの!卒業までもう一ヶ月しかないんだよ!」
香織は遠慮なく叱りつける。
なんともタイミングの良いことに、バレンタインデーがひかえていた。
受験生といえども、イベントを無視することなんてできるはずもないあたし達。
香織に引きずられるようにして百貨店の特設会場へ行き、雄平に贈るべく、チョコを買わされた。
「香織も雄平にあげるの?」
たくさんのチョコを抱える香織にそう聞くと、
「馬鹿!あげるわけないじゃん!」
どうやら、家族やあたし達にくれるつもりらしい。
香織のチョコをもらいたいたくさんの男子達には、少し申し訳ない気もする。
あたしも香織に習い、香織や美保、恵、そして父親へ贈るチョコを買い足した。
最初は渋っていたけれど、こうして準備を進めているのは楽しいもので、気持ちが高ぶってくる。
失敗だったのは、チョコレートを贈ることが何を意味するかを、すっかり忘れていたことだ。



