そして将太君は、照れくさそうに言う。
「俺のこと、嫌わないでくれてありがとう。あんなことしたのに…」
体育大会でのことだ。
そういえば、そんなこともあった、と思えるほど、あたしの心の傷は、すっかり癒えていることに気付く。
倒れた将太君を心配して保健室に行ったら、押し倒されてしまった。
本当に怖くて、男性恐怖症になってしまうかと思ったけれど、将太君の誠意のおかげで、そうならずに済んだ。
でもあたしは意地悪を言う。
「ほんと、あれは怖かったよ。今後気をつけてね、犯罪者にならにように!」
「はい…気をつけます…」
頭を下げる将太君の姿を見て、思わず笑ってしまう。
こうして何度も二人で笑い合ったことは、確実にあたしを救ってくれた。
将太君は、あたしにとって、かけがえのない存在だった。
だから言う。
「あたしのこと、好きになってくれてありがとう」
あたしのかわいい後輩。
卒業しても、ずっと忘れない。
その明るい笑顔を、決して忘れない。



