きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




ふと、心の一番深い所に残っていた、しこりのようなものに気付く。


これに触れるのには、勇気がいる。


でも、このままにしておいては、あたしはまっすぐに雄平に向かっていくことはできない。


「ね、香織。一つ、聞いておきたいことがある」


きっと、香織はもう、隠さない。


香織のことだから、はっきりと言ってくれる。


「修学旅行で、雄平に告白してくるって言った時のことなんだけど…」


「ああ、やっぱり、見てた?」


香織は、あたしが二人を目撃してしまうことまで、計算していたらしい。


そっと悲しげに微笑んで、


「本当は、杏奈を傷付けるための武器になるはずだったんだけどね」


残酷な言葉も、今は心に刺さらない。


実際に“武器”にしてこなかったところを見ると、何かがあったということがわかる。


香織もあの一件で、何か傷を負ったのかもしれない。


「千葉君と杏奈が付き合うみたいだって言ったんだ、雄平君に。弱らせて、モノにしようとしたの。浅はかだよね、あたしも」


そう言って笑う姿が、なんだか痛々しい。


「杏奈は、何を見た?」


香織が反対に聞いてくる。


「手を繋いでた。それで…キスしそうに見えたから、慌てて逃げてきた」


「なんだ、いいとこ見てるね。それは傷付いたでしょ。あたしの作戦、成功してたんだ」


わざと冗談めかして言う香織。


「でも、もう少し見てれば、傷付かずに済んだんだよ」


それは、どういう意味?