きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




あたしは香織をぎゅっと抱きしめる。


香織の細い肩も、頬に触れる柔らかな髪も、優しい香りも、何もかも懐かしい。


「やめてよ、気持ち悪いな」


憎まれ口をたたきながらも、振り払うことはしない。


それが香織の応えだと、思っていい?


ちょっと毒舌な香織が、きっと本当の香織。


本当の姿を見せてくれたのだから、今度こそ、本当の親友になれる。


「あたしのこと、認めてくれてありがとう」


自分にも気付いてもらえなかったあたしの魅力に、気付いてくれた香織。


香織のような素敵な女の子に認めてもらえるなんて、あたしは幸せ者だ。


あたしの知らないところで、あたしを認め、そして憎んだ香織。


嫌いだから近付いてきたと知ることは、悲しいことだった。


でも、それはきっかけに過ぎない。


結果的に、友達になれたのなら、それでいい。


香織のしたことは、ひどいことだと思う。


人の心をもてあそぶことも、悪意のある嘘をつくことも、許されることではない。


あたしは香織の思うままに振り回され、傷付いてしまった。


でも、結局失ったものは何もないのだ。


あたしが香織を恨む理由など、一つもない。


自分の甘さが、あたしは嫌いじゃない。