あたしは香織をぎゅっと抱きしめる。
香織の細い肩も、頬に触れる柔らかな髪も、優しい香りも、何もかも懐かしい。
「やめてよ、気持ち悪いな」
憎まれ口をたたきながらも、振り払うことはしない。
それが香織の応えだと、思っていい?
ちょっと毒舌な香織が、きっと本当の香織。
本当の姿を見せてくれたのだから、今度こそ、本当の親友になれる。
「あたしのこと、認めてくれてありがとう」
自分にも気付いてもらえなかったあたしの魅力に、気付いてくれた香織。
香織のような素敵な女の子に認めてもらえるなんて、あたしは幸せ者だ。
あたしの知らないところで、あたしを認め、そして憎んだ香織。
嫌いだから近付いてきたと知ることは、悲しいことだった。
でも、それはきっかけに過ぎない。
結果的に、友達になれたのなら、それでいい。
香織のしたことは、ひどいことだと思う。
人の心をもてあそぶことも、悪意のある嘘をつくことも、許されることではない。
あたしは香織の思うままに振り回され、傷付いてしまった。
でも、結局失ったものは何もないのだ。
あたしが香織を恨む理由など、一つもない。
自分の甘さが、あたしは嫌いじゃない。



