あたし達が過ごした数ヶ月が、偽物だとは思えない。
あたしは香織と過ごした日々を思い出す。
本気で笑い合っていた日々を。
香織は、気の合うふりをしていたと言ったけれど、全部が全部そうだったとは思えない。
いつも一緒にいた。
嫌いな相手と、四六時中一緒にいることなんてできる?
あたしは信じる。
香織が何と言っても、あたし達はちゃんと、友達だった。
「ねえ、香織はまだ、雄平のこと、好き?」
そっと香織に歩み寄る。
視線を落として、じっと一点を見つめる香織に、もう一度問う。
「好き…なんだよね」
香織は顔を上げて、あたしを見た。
かすかに揺れるその目からは、冷たさも強がりも消えて、
「好き…」
とても綺麗な、恋をする目だった。
「あたしも、雄平のこと…」
“好き”
その一言が、言えなかった。
本人に告白するわけじゃないのに、胸がぎゅっと締めつけられるように苦しくて、言葉にならない。
でも香織はわかってくれた。
それは、あたしと香織が、親友だから。
「そんなの、とっくに知ってる。ばか」
“ばか”…に愛情を感じたあたしは、本当に馬鹿なのかもしれない。
でもあたしは、そんなあたしが嫌いじゃない。



