きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




目の前で、冷たい目をして笑う香織。


「あたしの目的は、雄平君を手に入れること、そして捨てること。それから、杏奈を傷付けること」


あたしの肩に手を置き、顔を覗き込む。


「親友だと思ってたのに、実は嫌いだったって言われる気分は、どう?」


あたしは、香織を憎いと思っているのだろうか。


こんなにひどい目にあっているのに、どうして香織を、かわいそうだと思ってしまうのだろう。


「香織…あたしは、好きだよ…」


香織を見上げるけれど、にじんだ涙で揺れて、よく見えない。


「馬鹿じゃないの!」


肩を押されて、少しよろめく。


「ほんと、ムカつく!」


香織は声を荒げて、あたしに背を向けた。


「そういうとこ、大っ嫌い!こんな目にあってるんだから、もう良い子ぶるのやめなよ!」


香織の背中は小さくて、頼りなくて、そしてとても、淋しそうだった。


香織はきっと、たくさん傷付いた。


雄平を好きになって、苦しくて、いつも雄平の近くにいるあたしに、それをぶつけたかった。


意地悪であたしを嫌ったのではない。


あたしを嫌いになることでしか、気持ちを保てなかった。


雄平には軽い気持ちで告白したって言ったけど、きっと、すごくすごく好きだった。


いくら『ムカつく』と言われても、香織の悪意を感じることができない。


いくら『嫌い』と言われても、本当だとは思えない。


そんなあたしは、きっと香織の言う通り、偽善者だ。


でも、それがあたしだ。