長くため息をつき、香織は再び口を開く。
「みんな、だらしないよね。千葉君も、将太君も」
「え…?」
またしても、突然出てきた名前に戸惑う。
「どっちかがモノにしてくれると思ってたのに。期待はずれ」
二人のことも、思い通りにしようとしていたの?
香織の手がどこまで及んでいたのか、底が知れず、背筋が冷たくなる。
「噂もうまく流せたのに、残念」
やっぱり、雄平と香織がつきあっているという噂を流したのは、香織だった。
それは、あたしを雄平から遠ざけるためだろう。
そして、傷付いたあたしを将太君か千葉君が救い、あたしも惹かれていくというのが、香織の策略だった。
「将太君はまだまだ子供だけど、千葉君はいい男だと思うよ。あたし次、狙っちゃおうかな」
香織はそう言って、意地悪に笑う。
でも、その顔は、きっと嘘だ。
香織はきっと、本当に雄平が好きだった。



