「どうしてそんなことをしたかっていうとね」
香織の言葉に、ごくりと唾を飲む。
「理由は、雄平君」
突然出てきた名前に、肩がピクリと動く。
「あたし、一回告白してるんだ。二年の時に」
胸がきゅっと縮む。
あたしの知らないところで、そんなに前から、二人は繋がっていた。
「でも、フラれたの」
その言葉に、再び心臓が反応する。
今度は、純粋な驚きだった。
「フラれた…?雄平が、香織をフッたの?」
こんなにかわいくて、たくさんの人から告白されているような子を、雄平がフッただなんて。
雄平は、馬鹿だ。
「あたし、ちょっと調子に乗ってた。何人もの男の子に告白されて、みんながあたしのこと好きになってくれる気がしてた」
香織は本当にかわいいし、性格も明るくて優しいし、みんな香織を好きになると、あたしだって思う。
「悔しかったぁ。人生で初めてフラれたんだもん。だから執着しちゃったのかな。雄平君は何とも言わなかったけど、すぐ気付いた。杏奈の存在」
「あたし…?」
なぜ、ここで自分の名前が出てくるのか、わからなかった。
香織の言葉を、信じることなんてできない。
「ねえ、本当に気付いてないの?雄平君は杏奈のことが好きなんだよ」
そんなこと、思えるわけがなかった。



