その言葉は粘性を持って、ゆっくりとあたしの心にまとわりついていった。
そして、心臓を締め上げる。
じわり、じわりと、痛みが広がる。
やがて心臓の動きを止めてしまうのではないかと思うほど、それは力を緩めることがない。
「やっぱり気付いてなかった。人が良すぎるんだよ、杏奈は」
わずかに顔を歪めた香織は、本当にあたしのことを嫌っているのだろうか。
そこにまだ望みがあるような気がした。
あたしは尚も香織を信じていた。
「わざと杏奈に近付いたの。わざと気の合うふりをしたの」
香織は、淡々と話し始めた。
「一年の時から杏奈のこと知ってたよ」
「香織が、あたしを?」
接点もないし、あたしは目立つタイプではないのに。
「美人のくせに、自分に自信がないように見えた」
香織の言う通り、あたしは自分に自信がなかった。
女の子らしくできない性格も、高めの身長も、コンプレックスでしかなかった。
「だから体育大会の時、自覚させてあげたの。チアの衣装着てメイクした自分を見て、どう思った?少しは自覚できたでしょ?」
香織がクスクスと笑う。
「怖いくらいに大成功だったね。まさかあんなに急にモテ始めるとは思わなかった」
確かにあたしは、体育大会の後、たくさんの人から告白された。
香織が綺麗に飾ってくれたあたしは、あたしが思うよりずっと目立ってしまったのだと、その時に知った。
それは全て、香織に仕組まれたことだった。
周囲の人をも巻き込んで、現実を自分の思う通りに動かした香織が、怖い。