きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




雄平が、顔を歪めて、両手であたしの頬を包む。


「ごめん、杏奈…」


どうして謝るの?


あたしは勝手に泣いているだけ。


泣きたいわけでもないのに、涙が勝手に流れているだけ。


泣きたいのは、雄平のように見えた。


香織は、雄平のこんな顔を見て、放っておけなかったのだろう。


香織は、優しいから。


あたしは雄平の手をすり抜けて横を向き、手の甲で涙をぬぐう。


あたしには、香織のように雄平の傷を癒すことはできない。


今、雄平に悲しい顔をさせているのは、他の何でもない、あたし自身だ。


「ごめん。ちょっと、混乱してる。香織も、何も話してくれなかったから」


香織に隠し事をされていた淋しさも、嘘ではなかった。


少なくとも当時は、親友だと思っていたから。


あたしは、何でも香織に話していたから。


香織と雄平が付き合っていないとわかって、ホッとしたはずなのに、心は少しも晴れない。


やっぱり、真実を知ることだけが、全てではなかった。


「寒いね。行こう」


あたしは歩き出す。


「杏奈!」


雄平が呼ぶ。


立ち止まるあたしに、雄平がもう一度呼びかける。


「杏奈…」


悲痛な叫びにも似たその声に、ゆっくりと、振り返る。


何かの痛みに耐えるように、雄平は顔を歪め、あたしを見つめている。


その視線が鋭すぎて、心がえぐられるようだった。


雄平は、絞り出すように、言った。


「杏奈は、誰が好きなの?」