しばらく、誰も何も言わなかった。
やがて司会の森がやってきて、クリスマスケーキの準備をするからと言って、雄平を連れて行ってしまった。
「完全に誤解してたな」
千葉がそう言い、ため息をつく。
「俺達が付き合ってるなんて噂、あったのか。伊田、知ってた?」
あたしは首を横に振る。
耳にしたことはないし、誰かに千葉とのことを聞かれることもなかった。
むしろ、ほとんどの人には将太君と付き合っていると思われている。
学校でも度々二人で話をするし、文化祭も一緒に回っていたから、無理もない。
でも、千葉のことは、心当たりが全くない。
あたしと千葉との間にあったことは、香織にしか話していない。
香織にしか。
じわじわと、鼓動が速くなっていく。
確かに、香織しか知らない。
でも、だからといって、香織が雄平に何か言ったことにはならない。
特に修学旅行中、あたしと千葉が親しげに話しているのを見た人が、そう誤解して、それが噂になったということも考えられる。
決まったわけじゃない。
香織が雄平に、あたしと千葉が付き合っていると嘘をつき、それを雄平が信じていたと、決まったわけじゃない。
「勝手な予想だけど」
千葉が口を開く。
「宮下が絡んでるなんてこと、ないよな」
ドクンと心臓が脈打つ。
「そんなわけない…!」
思わず声を上げていた。



