ムードメーカーの森と雄平が司会をするのは、全員が予想し、期待していたこと。
「本日はお集まりいただきありがとうございます」
森がマイク片手に、真面目な雰囲気で話し始める。
でも、
「くくっ…」
「ぶっ」
三角帽子に鼻眼鏡姿なのに無表情で話し始めるものだから、全員がふき出すのを我慢できるはずもなく、
「おーい、真面目にやれよー!」
さっそく、親しみの込められた野次が飛ぶ。
「はい、笑いも取ったところで、始めましょうか!みなさーん、飲み物の準備はいいですか?」
雄平が紙コップを持って、みんなの様子を見渡す。
そして、ニッと笑い、手を高々と掲げた。
「今日は思いっきり楽しもう!乾杯!!」
紙コップをぶつけ合って、ジュースを飲み干す。
お弁当屋さんが特別に作ってくれたクリスマススペシャルオードブルは、どれもおいしそうだ。
ちらりと雄平を盗み見ると、既に口いっぱいに何かを頬張っている。
あの日より伸びた髪は、まだ切られていない。
千葉が文化祭の時に撮ってくれた写真の中の雄平に比べ、前髪が少し長いだけで、ずいぶん大人っぽく見える。
普段はあまり雄平の顔を見ないようにしているから、あの写真の雄平が、あたしの中の雄平のイメージになってしまった。
こうしてたまに実物を見ると、やけにドキドキする。



