雄平が一歩前に出て、あたしの隣に来た。
「よ!杏奈」
「なんだー。雄平かぁ」
照れ隠しに憎まれ口をたたいてしまう、かわいくない自分が憎らしい。
雄平が差し出した手に、自分の手を重ねる。
そして、横に並ぶ。
しっかりと手を握ってくれるところが、雄平らしい。
恥ずかしがって、ほとんど触れているだけの男の子が多いのに。
キャンプファイヤーの炎のせいか、花火の夜を思い出す。
こっそり二人で抜け出して走った時も、手を繋いでいた。
あの頃と、色々なものが、変わってしまった。
一歩足を進める度、雄平の腕が肩に触れる。
「綺麗だな…」
音楽にかき消されてしまいそうに小さな声が、耳元で聞こえた。
雄平を見上げる。
雄平は、まっすぐにキャンプファイヤーを見つめていた。
炎が目の中をゆらゆらと揺らす。
雄平も、あの夜を思い出している?
みんなでやった花火を。
二人で見た、ホタルを。



