最終的には、お化け役の子を捕まえて、八つ当たりしていた。
「将太君のためのお化け屋敷だったね」
「もーやだ。かっこわりぃ」
少し呼吸を乱しながら、出口の外で、壁に張り付いて顔を隠す将太君。
「楽しかったよ」
そう言って、あやすように背中をポンポン叩いていると、
「あ!将太じゃん。彼女?」
男の子二人が声をかけてきた。
将太君の友達の一年生だろうか。
振り返ると、
「え、あ、伊田先輩!?」
二人ともあたしの顔を見るなり、慌て始める。
あたしのことを知っているようだけど、あたしは見覚えがない。
「うそだろ、将太。伊田先輩と付き合ってんの!?」
興奮気味の男の子二人。
将太君はあたしの肩を抱いて、自慢げに言う。
「いいだろー」
あたしはその腕からするりと抜け出して、
「違います」
きっぱりと言う。
けれど、
「すげぇ…。将太のこと見直したよ」
「おまえってすごい奴なんだな」
なぜか感心している二人。
そしてなぜか、あたしに握手を求める二人。
「俺、マジで伊田先輩のファンなんです。感激っす」
あたしが差し出した右手を両手でしっかりと握りながら、そんなことを言われた。
「あ、ありがとう」
どういう反応をしたらいいのかわからず困惑しながらも、もう一人とも握手をする。
「ありがとうございます!!」
二人は深々と頭を下げて、将太君に、
「すげぇじゃん!」
「がんばれよ!」
などと言いながら、去っていった。



