ダンス部の発表が終わると、将太君は何事もなかったかのようにあたしの手を離し、
「教室回ろっか」
にっこり笑って立ち上がった。
暗い体育館から出て、外のまぶしさに目を細める。
体育館での出来事が、夢だったように思えた。
カラフルなスポットライトが作る、複雑であいまいな空間。
自分の心の中を見たら、あんな感じかもしれない。
一瞬振り返って、体育館の入り口を見るけれど、真っ暗で中まで見えなかった。
「お化け屋敷行こうよ」
将太君が振り返って言う。
「将太君のクラスの?言っとくけど、あたし、お化け屋敷好きだからね」
「え!?強がらなくていいんだよ?抱きついていいんだから」
そう言うけれど、本当の怖がりは、将太君だった。
「うわっ!!」
「杏奈、待って!先行かないでよ!」
「ちょっ…今んとこ、予定と違うし!」
「ぎゃー!!」
暗幕で光を遮られた教室に、ダンボールで仕切られた迷路のようなコースを歩きながら、要所要所で声を上げる将太君。
物陰から、お化けに扮したこのクラスの子達が飛び出してくるのには驚くけれど、
「どこから何が出てくるか、わかってるんじゃないの?」
少し呆れながらも、将太君の反応を楽しむ。
将太君が言うには、計画とずいぶん違うらしいのだけれど、それにしても怖がりすぎだ。



