「こういう機会じゃないとさ、ああいう格好ってできないじゃない?あたしも本当は恥ずかしいもん」


思いがけない言葉に、あたしは顔を上げて香織を見る。


「香織も、恥ずかしいの?香織でも?」


香織は少し困ったように眉を下げる。


「そうだよー」


それを聞いて、なんだか安心した。


あたしだけじゃないんだって思うと、少し心強く思うことができた。


「恥ずかしいけど、体育大会だからノリで着ちゃって許されるんだよ。こんなチャンスって他にないよ」


「チャンス?」


そっか、チャンスか。


そういう考え方、あたしにはなかった。


香織って、こういう考え方するんだ。


「ね、着よう?」


香織の大きな目で覗き込まれると、なんだか大丈夫なような気になってしまって、


「う…ん…わかった」


頷いてしまった。


「やった!杏奈大好きー」


香織が無邪気に抱きついてきて、すっかり香織のペースに巻き込まれていることに気付かされる。


いつものあたしなら、何が何でも拒絶していたのに。


香織って本当、大した子だと思う。