千葉自身、なぜそう感じるかはわからないと言った。
でも、洞察力の優れた千葉の言葉だけに、妙に説得力がある。
千葉の考えが正しければ、学校では一緒に過ごしていないことも、休日のデートを目撃したという話を聞かないのことも、説明がつく。
でも、修学旅行の夜、二人は手を繋いでいたことは?
香織は告白すると言って雄平のもとへ行き、そこで手を繋いでいたということは、香織の告白がうまくいったからだと考えるのが自然だ。
それが、そもそもの見当違いなのだろうか。
「杏奈っ。おまたせ!」
ポンッと肩を叩かれて、我に返る。
振り向くと、将太君がいた。
「はい、お土産」
そう言って差し出してきたのは、マンガみたいなぐるぐる巻きの棒付きキャンディー。
「わあ、かわいい!」
感激して受け取る。
「そこで売ってたから、買ってきた」
そう言って、自分の分をペロリとなめる。
将太君が笑うと、胸がチクリと痛んだ。
こんなふうに大切にしてくれる将太君を、いずれ好きになると思っていた。
それなのに、雄平が香織と付き合っていないかもしれないと疑い始めた途端、いとも簡単に心がぐらりと傾いてしまう。
「行こっ!」
そう言って、将太君はあたしの手を握る。
「ちょっと、手は駄目だって、手は!」
慌てて振り払うと、将太君はいつもみたいに口をとがらせるのではなく、にっこりと笑った。
もしかすると、将太君は気付いていたのかもしれない。
あたしが、雄平のことばかり考えてしまうことに。



