きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




千葉自身、なぜそう感じるかはわからないと言った。


でも、洞察力の優れた千葉の言葉だけに、妙に説得力がある。


千葉の考えが正しければ、学校では一緒に過ごしていないことも、休日のデートを目撃したという話を聞かないのことも、説明がつく。


でも、修学旅行の夜、二人は手を繋いでいたことは?


香織は告白すると言って雄平のもとへ行き、そこで手を繋いでいたということは、香織の告白がうまくいったからだと考えるのが自然だ。


それが、そもそもの見当違いなのだろうか。


「杏奈っ。おまたせ!」


ポンッと肩を叩かれて、我に返る。


振り向くと、将太君がいた。


「はい、お土産」


そう言って差し出してきたのは、マンガみたいなぐるぐる巻きの棒付きキャンディー。


「わあ、かわいい!」


感激して受け取る。


「そこで売ってたから、買ってきた」


そう言って、自分の分をペロリとなめる。


将太君が笑うと、胸がチクリと痛んだ。


こんなふうに大切にしてくれる将太君を、いずれ好きになると思っていた。


それなのに、雄平が香織と付き合っていないかもしれないと疑い始めた途端、いとも簡単に心がぐらりと傾いてしまう。


「行こっ!」


そう言って、将太君はあたしの手を握る。


「ちょっと、手は駄目だって、手は!」


慌てて振り払うと、将太君はいつもみたいに口をとがらせるのではなく、にっこりと笑った。


もしかすると、将太君は気付いていたのかもしれない。


あたしが、雄平のことばかり考えてしまうことに。