おもしろい写真が、教室の壁にたくさん加わった。
雄平の、みんなの、楽しそうな顔。
見ていると、幸せな気分になる。
「伊田。プレゼント」
千葉が帰りがけにそう言って差し出してきたのは、ポラロイドカメラで撮った写真だった。
全部壁に貼ったと思っていたのに。
受け取って見て、驚いた。
そこに写っていたのは、笑い合う、雄平とあたし。
楽しそうで、仲が良さそうな、二人。
あたし、こんな顔で雄平を見ていたんだ。
それは、恋する女の子。
あたしはまだ、雄平のことが好きでたまらないという顔をしている。
「小野にはちゃんと言った?」
千葉が、小声で問う。
「ううん…。だって、雄平は香織と付き合ってるんだよ」
そう言うと、千葉は少し考え込んでから、さらに声をひそめる。
「それって、本当なのか?」
意味が、わからなかった。
雄平と香織が付き合っているというのが、本当かどうかなんて。
「どういう…意味…?」
声が少し震える。
確かに、本人に聞いたわけではなかった。
香織からも、雄平からも。
でも、あの夜、手を繋いでいる二人を、あたしは確かにこの目で見た。
クラスのみんなだって、あの二人が付き合っていると噂している。
噂…?
ただの、噂なの…?
「確かめたわけじゃないけど、俺は、噂が間違っていると思ってる」
千葉は、言った。
その目は真剣で、とても適当なことを言っているようには見えなかった。



