クラスメイトの誰かが持ってきたアフロヘアーのカツラや大仏の顔のかぶり物を身につけ、壁紙の前でポーズを決めるみんな。
「あたし撮るね」
ポラロイドカメラを手に取ろうとすると、
「俺撮るから。お前も写んなよ」
一緒に来ていた千葉がそれを奪う。
戸惑うあたしの背中を押して、
「女の子は真ん中だよな」
そう言って立たされたのは、雄平の隣だった。
千葉を見ると涼しげな顔をしていたけれど、わざとやっているとしか思えない。
千葉は、雄平が香織と付き合っていることを知らないの?
こんなの、小さな親切、大きなお世話、だ。
「ちゃんと笑えよ」
声がして隣を見ると、雄平と目が合った。
久しぶりかもしれない。
雄平は、ニッと笑って、自分の頭に乗っていた赤いアフロヘアーのカツラを取って、あたしの頭に乗せる。
「お、似合うね」
「うれしくないんだけど!」
「伊田ぁ。俺は?」
反対側を向くと、すぐそばに大仏の顔があって、思わず笑う。
その瞬間、カシャッという音が響く。
「え!?今撮った?」
千葉を振り返ると、楽しげに笑っている。
「適当に撮るから、その調子で遊んでて」
「えーやだよ。ちゃんと撮ってよー」
不満げな声をもらすけれど、
「杏奈ちゃぁん」
変な声で呼ばれて振り返ると、ウサギの耳をつけた雄平がセクシーポーズに挑戦している。
思わず笑う。
心から。
みんなでふざけあって、色んなポーズを取って、交代で何枚も写真を撮った。
楽しかった。
うれしかった。
久しぶりに、雄平と笑い合えた。



