少し肌寒い廊下で、
「将太君のクラスは何するの?」
休み時間に偶然会った将太君と、束の間のおしゃべり。
「お化け屋敷!」
「わ、ベタだね」
「でしょ。でね、杏奈と一緒に入って、抱きついてもらうの」
「それもベタ。絶対ないから」
ニヤニヤする将太君に、ぴしゃりと言い放ち、笑い合う。
あたしのキツい物言いに、将太君もずいぶん慣れてきたらしい。
「俺は準備がんばってるから、当日は完全フリーなの」
「うん、わかった。じゃあ、予定決まったら教えるね」
当日一緒に回ることを約束してしまったので、そう答えるのはごく当たり前なのに、一瞬固まる将太君。
そして、しみじみとつぶやく。
「…なんか、今の、彼女っぽい」
「は!?全然普通だって!」
慌てて否定するも、うれしそうな将太君。
「ね、もう一回言って」
甘えた声を出すけれど、
「そんなこと言ってたら、一緒に回んないよ」
そう言って脅してみる。
「え!?やだやだ!ごめん、杏奈」
「よろしい」
将太君の反応がおもしろくて、ついつい遊んでしまうのだけど、あたしはこんな時間が楽しくて仕方なかった。
息苦しい教室より、肌寒い廊下が、心地良かった。