大変なことになってしまった。
「あたし、無理…」
暗い顔をしてうつむくあたしを覗き込んだ香織は、優しく言う。
「チアの衣装、嫌い?」
本当は、憧れていた。
一年生から見る三年生はとても大人で、その中でも、応援団のチアは特別な存在だった。
あたしも三年生になったら、あんなふうに素敵になれたらいいなって思っていた。
「嫌いじゃないよ…。かわいいもん」
かわいいけど、あたしには似合わない。
香織はそんなあたしの心を見透かす。
「かわいいって思った服は、着てみたいって思うよね?似合うかどうか、考える前に」
ショーウインドウで見たかわいいワンピースも、街を歩くたくさんの女の子が履くふんわりしたスカートも、あんなのが似合う女の子になれたらって、見る度に思っていた。
でもあたしは、あの日憧れていた先輩のようにも、街を歩くかわいい女の子達のようにも、全然近付いていない。