「杏奈!」
ニコニコ顔の将太君が、まだ茫然としているあたしに駆け寄って来る。
額の汗が、照明を反射して光る。
それと同じくらい、キラキラしている将太君の目。
「嘘でしょ…」
「嘘じゃないよ。俺が勝ったの。すごいでしょ」
将太君は、あたしの前で誇らしげに胸を張る。
まだコートの中で立ちつくしているクラスメイトに視線を移す。
みんな、言葉を失っていた。
雄平は床にぺったりと座り込んでいて、こちらからは表情が見えない。
胸がズキズキする。
こんなふうに打ちひしがれた雄平を見るのは、初めてのことだ。
「行こっ」
将太君があたしの肩を抱くようにして、強引に歩かせる。
「え、え、ちょっと、」
あたふたとするあたしをよそに、ずんずんと歩みを進める将太君。
半ばさらわれるようにして、あたし達は体育館を後にした。



