すると香織は、とんでもないことを言い出した。
「杏奈も一緒にやってくれる?」
「は!?あたし?無理無理!」
大慌てで否定する。
だって、あんなフリフリミニスカート、あたしに似合うわけがない。
雄平あたりにからかわれるだけ。
「なんて格好してるんだよ」って声が聞こえてきそう。
そんなことを考えていたから、
「どっちかってゆーと学ランだよな、杏奈は」
ふいに聞こえてきた雄平の声が、現実のものどうか把握するまでに時間がかかる。
ぼんやりしていると、頭にずっしりと重みを感じて、それが雄平の腕だとわかる。
「ちょ、重いんですけど。ていうか、何気にまた失礼なことが聞こえてきたんですけど」
その腕から逃れようと体をよじると、
「確かに学ランも似合いそう!」
香織が目をハートにする勢いで声を上げた。
確かにあたしは学ランってタイプなのは、自分でも認めるところだし、一度着てみたい気もする。
「しょうがない、かわいい香織のために、学ラン着てあげようじゃない」
意気揚々と言うと、
「だーめ。ここは男子に花持たせてよ」
雄平が言い、ちょっとつまらない気分のあたしに反して、香織は素直に従う。
「そうだね。雄平くんが団長でしょ?」
「もちろん!」
「じゃあ、あたしもチアがんばる!ね、杏奈」
「え!?あたしは…」
「よっしゃ、決まり!黒板書いてこよっと」
「あっ!待って!ちょっとぉ!!」
呼びとめる声もむなしく、雄平は飛んで行ってしまった。