「小野君のこと、ずっと見てる気がしたから」
心臓が、きゅっと縮む。
美保は、気付いてしまった?
それとも、あたしは、そんなあからさまだった?
絶対に気付かれてはいけないのに。
どうして自分を抑えられなかったのだろう。
唾を飲み込んで、慎重に言葉を選ぶ。
「自分のクラスの応援だから、確かに雄平のことは見てたかな。でも、それだけだよ?」
そんな嘘が、通用するだろうか。
美保はじっとあたしを見る。
思わず目をそらしてしまいそうになったけれど、そうすることは、嘘を白状することと同じだ。
実際にはそうではなかったけれど、とても長い時間に思えた。
ふ…っと美保の表情が和らぎ、
「そうだよね。ごめんね!」
そう言って、ようやく視線をはずした。
「もしそうなら、香織がかわいそうだと思ったんだ」
その言葉に、ドキリとする。
「友達と同じ人を好きになることって、結構あるじゃん?一緒に追いかけてるうちに、自分も…みたいな」
そういう話は、よく耳にする。
そして、それがきっかけで友情が崩壊してしまったということも。
人を好きになるのは自由だし、心をコントロールできるものでもないのに、堂々と好きでいられるのは、最初に友達に打ち明けた人だけなのだ。
後から好きになった人は、ひどく非難される。
それが親友なら尚更で、あたし達は、親友の好きな人を、絶対に好きになってはいけないのだ。



