きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




試合の合間に、一人でトイレに行った。


あたし以外に誰もおらず、体育館からの歓声が聞こえてくる。


手を洗っていると、洗い場の鏡に美保が映り込んだ。


「あ、美保もトイレ?」


ハンカチで手を拭きながら振り返ると、美保は少し表情を強張らせていた。


いつも笑顔の美保だから、何かあるということはすぐにわかった。


「どうしたの?」


美保は、トイレの方に目をやって、全てのトイレが空いていることを確認してから、口を開く。


「あの、違ったらごめん…。ううん、違った方がいいんだけど…」


美保は視線を落として、片方の靴を爪先でつつきながら、言う。


「杏奈って、小野君のこと、好きじゃないよね…?」


ドクン、と心臓が脈打つ。


どうして、美保がそんなことを聞いてくるのだろう。


誰にも言っていない、この想い。


消さなければならない、この想い。


美保が、知るはずがないのに。


「何で?」


平静を装いながら、逆に問う。


美保は顔を上げて、あたしの本当の気持ちを見逃すまいとするかのように、じっと目を見る。