放課後、体育館の使用許可がクラスごとに回ってくることになっていて、今日がその初日。
女子チームは円になって、和やかな雰囲気でボールを上げる。
一方、男女混合チームは、さっそくスパイク練習を始めていた。
「きゃー!小野君うまい!」
あちこちで歓声が上がったのは、雄平のスパイクがすごいコースで決まった時だった。
女子チームもしばらく手を止めて、雄平のプレイに見入る。
まったく、嫌味なくらいに何でもできる。
モテるのも、わかる。
Tシャツの袖を肩までまくりあげて、汗を流す雄平は、悔しいけれど、かっこいい。
思わず見つめてしまったけれど、視界に香織の姿を捉えた瞬間、あたしは視線をそらす。
香織も雄平を見つめている。
いつも、一番近くで。
胸がヒリヒリする。
閉じ込めた感情が、胸の奥で騒ぎ出す。
その気持ちをなだめるために、あたしは小さく深呼吸する。
きっと、今だけ。
だから、大丈夫。
「サーブ練習しようよ!」
雄平に背を向けるようにして、あたしは隣のコートに立った。



