修学旅行の余韻も冷めやらぬ中、秋の体育大会の準備が始まった。
春の体育大会ほど盛大なものではなく、応援団もない。
種目も一つで、今年はバレーボールに決まっていた。
クラスで男子のチームと女子のチームをそれぞれ二つと、男女混合チームを二つ作る。
「おーい、仲良し二人組。混合Aチームに入らない?」
あたしと香織に声をかける雄平。
香織と雄平のいるチームだなんて、精神的にきつい。
だから、
「あ、あたし、女子チームに誘われてて」
嘘をついた。
「ふーん、なんだ」
全然疑わない雄平と、きっと気付いている香織。
「じゃあ、あたしだけ入れてもらっていいかな」
「オッケー。あっち集まってるから、作戦会議しよ」
そう言って教室の前方を指差す雄平に続いて、香織は立ち上がった。
「じゃね、杏奈」
小さく手を振って、香織は行ってしまった。
あたしは嘘を本当にしなければならないので、女子が集まっている教室後方に向かった。
「女子チームまだ空いてる?あたしも入れてー」
「まじ?杏奈が来てくれるとめちゃ強くなるよ!」
「欲しいのは身長だけでしょー?」
「あ、バレた?」
冗談を言える自分に安心する。
大丈夫、ちゃんと笑える。