ぐいっと腕を掴んだのは、千葉だった。
あたしは車道に飛び出そうとしていた。
すぐ目の前をかすめるように車が一台通り過ぎて、背筋が凍る。
足から力が抜けて、崩れ落ちそうになるのを、千葉が支えてくれた。
「あのキーホルダーだな。ここで待ってろ」
ここから動かないようにと念を押してから、千葉は車が途切れたタイミングを見計らって、車道に落ちた鈴を拾った。
「よかった、轢かれてないな」
千葉が鈴を振ると、今までと同じ、チリンという涼しげな音が鳴った。
それをあたしの手のひらに乗せる。
少し傷がついて金色がはげているけれど、無事に戻ってきてくれた。
ぎゅっと握りしめて、胸に抱く。
「大事なものなんだな」
大事な…?
そう、大切な…
とても、とても、大切な…
目から涙がこぼれ落ち、足元のアスファルトに染みができていく。
あたしは馬鹿だ。
どうして気付けなかったのだろう。
「千葉…ごめん…!」
今更気付いたって、遅いのに。
「あたし、雄平のこと、好き…」
こんな鈴を、必死になって追いかけてしまうほどに。
雄平のことが、とても、とても、好きだった。
気付かないなんて、馬鹿だ。



