ぼんやりした頭で、最終日の朝を迎えた。
香織とは何度か話したけれど、肝心なことには触れていない。
荷物をまとめたり帰り支度をしたり、最後にもう一度旅館の土産店を見たり、バタバタとしていたことに救われた。
「杏奈、具合悪そう。大丈夫?」
帰りのバスの中、香織が心配そうにあたしの顔を覗き込む。
あたしはまだ香織の目を直視できないでいた。
この後、バスで駅まで行き、その後、電車に乗ることになっていたので、
「ん…駅まで寝る」
座席の背もたれに体を預けて、目を閉じた。
「辛くなったら言ってね」
香織はそう言ってくれた。
香織はこんなに優しいのに。
あたしは香織が大好きなのに。
雄平と香織が結ばれてうれしいはずなのに、こんなにも動揺している自分が嫌になる。
そして、その動揺を隠すこともできない自分の子供っぽさが嫌になる。
涙がにじんできそうになって、目をぎゅっとつむった。



