ふいに、廊下の向こう側から、数人の女子の笑い声が聞こえて、我に返る。
そろそろ部屋に戻ろうと、もと来た廊下を歩き始めた。
さっき通った時は気付かなかったのに、どうして今気付いてしまったのだろう。
まっすぐ前を見て歩いていればよかったのに。
通路が分かれる場所で、意味もなく左を振り返ってしまった。
その先には、男女のカップルがいた。
寄り添うようにして立っている、二人の後ろ姿。
遠目にも、誰なのかはすぐにわかってしまった。
あまりに身近な二人。
香織と、雄平。
二人は、手を繋いでいた。
そして、顔を寄せたように見えた。
次の瞬間、あたしは目をそらし、部屋の方へ向かって駆け出していた。
「よかった、香織、よかった」
スリッパが脱げそうになって、足取りがおかしくなる。
それでも立ち止まるわけにはいかなかった。
二人から、少しでも遠くに離れたかった。
「よかった…」
口で言うのは簡単なのに。
「よかったね、香織…」
大好きな親友の恋が実ったのに。
あたしの心は、泣いていた。



