きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




辺りが薄暗くなってきた。


もう、今夜の宿に戻った方がいいかもしれない。


あたしは、うっすらにじんだ涙を指でぬぐい、立ちあがってスカートの砂埃を払った。


その時、何か、物音を聞いた気がした。


鳥や風が揺らす葉の音しかなかった空間に、別の気配を感じる。


目を閉じて、耳をすませた。


「杏奈!」


目を開けた。


視界に、信じられない光景が飛び込んでくる。


これは、夢?


こんな小さな鈴の音が、聞こえるわけがないのに。


来てくれるわけが、ないのに。


「杏奈っ…」


目の前には、肩で息をする雄平。


肌寒いくらいの気候なのに、額には汗をかいていて、あたしのことを必死で探してくれたのが、わかった。


「おまえ…ほんと、あぶなっかしい…」


いらついたようにそう言って、いつもみたいに頭を小突かれると思って、思わず身構える。


でも、伸びてきた雄平の手は、あたしの頭を取り越して、代わりに背中に触れる。


ほんの一瞬の出来事だった。


背中の手に引き寄せられて、雄平の胸に顔が押し付けられる。