気分を落ち着かせようとしたのか、無意識にポケットの中に手を入れて、「お守り」に触れていた。
ひんやりとした感覚と共に、くぐもった鈴の音が聞こえる。
取り出して、振ってみる。
赤い紐のついた、犬の形の金色の鈴。
夏祭りの日、雄平があたしにくれたものだ。
チリン…チリン…
優しい音が響いて、少し気分が落ち着くのを感じた。
雄平…。
無意識に、心が雄平の名を呼ぶ。
『どこにいても見つけられるな』
そう言ってくれた雄平。
本当に、見つけてくれる?
チリン…
何度か音を鳴らすけれど、そんな自分の行動をおかしく思って、小さく笑う。
聞こえるわけがないのに。
それを認めてしまったら、急に泣きそうになった。
あたしはどこかで信じていたのかもしれない。
いつも、いつまでも、雄平と一緒にいられると。
雄平は、あたしにとって一番近い男の子で、あたしは、雄平にとって一番近い女の子。
その関係が、ずっと続くと思っていた。
でもそれが変わろうとしている。
あたしはきっと千葉と付き合うだろう。
そして雄平は、香織と…。
いつまでも変わらない関係など、きっと存在しない。
いつか、雄平にとっての一番近い女の子が、あたしではなくなる。
鈴を鳴らしたって、雄平はあたしを探してくれなくなる。
それは、避けられない現実。
こんな鈴に、何の意味もない。



