きらめきシーズン~卒業までの12ヶ月~




ここに来る前に別れたはずの千葉が、呆れ顔で腰に手を当てて立っていた。


「なっ…帰ったんじゃなかったの!?」


慌てふためくあたしの横を素通りして、自販機に小銭を入れ始める千葉。


「ジュース買いに来ただけなんですけど」


そう言われてしまい、あたしは言葉を失う。


「相変わらず、モテてんね」


からかうように言いながら、千葉はジュースを二本買った。


ごく自然に一本をあたしに手渡し、近くのベンチを促す。


「相変わらず…って、何よ」


ちょっと嫌味なセリフに、ふくれながらもベンチに座る。


「俺の知り合いでも、何人玉砕したことか」


くくっと笑う千葉。


「断る方だって辛いんだよ」


プルトップを立てた時のプシュッという音が、静かな廊下に響く。


「ふーん。全員断ってるの?」


「うん」


「なんで?」


千葉のその問いに、改めて考える。


そういえば、どうして?


告白された時は、軽くパニックになりながら、『ごめんなさい』と言うだけだった。


最初から、付き合うことなんて選択肢にない。


でも、それはどうしてなんだろう。


よく知らない人だから?


彼氏はいらないから?


ひとり、首をかしげていると、千葉が遠慮がちに言う。


「…好きなやつが、いるとか」


好きな、人?


ふいに、雄平の顔がよぎる。


違う違う。


雄平は、香織の好きな人。


「…いないよ?」


「今、ちょっと間があった」


「ほんとだってば」


「じゃあ、言う」


千葉が、ふーっと息を吐き、あたしを見た。


そして、言う。


「俺も伊田が好きだよ」