その日、ずっと上の空だった恵のために、なんとか小宮と二人きりになれるように、あたしは手を尽くした。
そしてそれに成功し、喜ばしい気持ちで、戻ってくる恵に手を広げた。
でも、恵は目にいっぱいの涙をためて、美保が肩に触れたと同時に、ポタポタとこぼれ落ちた。
小宮と思いが通じ合ったうれし涙なんかじゃないことは、容易にわかった。
顔をゆがめ、奥歯をかみ締めて、美保の胸で静かに泣く恵に、問いかける。
「告白、したんじゃないの?」
告白したとしたら、こんな結果にはなっていないはず。
それとも、小宮が恵のことを好きだというのは、あたしと千葉の思い込みだったのだろうか。
「…できなかった」
消え入りそうな声で、恵は言う。
「昨日のこと、忘れてって、言われた…」
恵は嗚咽をもらす。
「どういう、こと?」
「そんなの…言わせないでよ!」
恵があたしを見た。
怒りの混ざった目にひるむ。
でも、これは自信を持って言える。
「それでも、恵の思いは伝えるべきだよ」
「言えるわけないじゃん!」
恵は声を荒げる。
「忘れてってことは、あたしのこと好きじゃないってことだよ!?忘れて、なんて言われて、馬鹿みたいに告白なんてできるわけないよ!」
そう言って、美保の肩に顔をのせ、再び肩を震わせた。



