美愛の言葉に俺は驚いた。

「行くところ、ないのか?」

「…うん。誰もいないし、家もないし」

「だからって、なんで俺の家なんだ?」

 そりゃ、連れ込んだのは俺だけどさ、と俺は付け足した。

「玲央にゃんが好きだから」

 美愛がゆっくりとした口調で言う。

「え?」

「玲央にゃんは優しくて面白い人だから、好きだから」

 美愛が歌うようにゆっくりと言った。

「俺が?優しい?」

「うん」

 俺は、一度だって優しいなんて言われたことがなかった。だから、美愛の言葉には驚いた。

「俺を優しいなんて言うやつは初めてだ」

 俺が言うと、美愛が俺から下りた。

 背中が軽くなる。