「そりゃ狙われてるよ、水原くん」

「うん、下心丸出し」



舞華ちゃんと百合ちゃんは口をそろえて言う。


「てか前から思ってたけど水原くんてめちゃくちゃ鈍感じゃない?エリカのときだって全然意識してなかったみたいだし」

理香ちゃんまで…。


でも確かにそうだ。

水原くんは周りから見たらあからさまに自分に好意がある女の子がいても全く気づかない。




「そういえばさあ、あたしのクラスの子たちが、Dクラスの水原くんカッコいいよねって言ってたよ」

「ええ!?」


他のクラスの女の子まで!?


「でもさあ、それあたしの友達の彼氏だよって言ったらがっかりしてた。せっかくあいついなくなったのにって」

「あいつ?」

「エリカのことでしょ」



…なるほど。

今までエリカが怖くて水原くんに近づけなかったけど、エリカが退学した今、怖いものはない、と…。



「まあ、無理もないよね。水原くん顔いいし」

「帰宅部だけど運動めっちゃできるらしいね」

「西野がこの前の期末テストの成績表奪って見てたけど、学年で10位だったってさ」


危機感が募る。


水原くんてすごい人なんだ…。



…わたしじゃ釣り合わない。


わたしが暗い顔をしていたのか、舞華ちゃんがポンと肩を叩く。

「なーに気にしてんの、水原くんが好きなのは紗奈でしょ?」



…そっか。

そうだよね。



不安になっちゃいけない。



そう思った。

でも…


そんなにわたしは強くなかった。