ふと隣を見ると、雪川さんがこっちを見ていた。


「雪川さん?」


鼻にクリームでも付いてる?


「ごっ、ごめんね!」


…違うみたい。



ふと屋根の外を見ると、雨は止んで光が差している。


「雪川さん、雨止んだ」

「えっ!?…ほんとだ…」

「よかった。これで帰れるな」


自分で言って気づいた。

そうか、もうこの時間は終わってしまうのか。



また雪川さんと話せるのはいつになるんだろう。

いや、むしろそんな機会もうないかもしれない。



そう思うと、すごくつらくなってきた。



そう思ってるのはバレないように平常心を装って、2人で公園を出てしばらく歩く。

分かれ道まで来るのはあっという間だった。


「じゃあ、気をつけて帰ってね」



名残惜しいのは隠して、自分の家の方の道を歩き出した。



「水原くん!」

少し歩いたところで、急に呼び止められる。

びっくりして振り返ると、雪川さんが笑顔で手を振っていた。


「また明日ねー!」


…また明日?

また明日も会えるってこと………??



俺も手を振り返した。

笑ってたと思う。


雪川さんは走って帰っていった。



学ランは、いい匂いがする気がする。



なんだか体が熱い。

少しクラクラする。


そう思いながら、家に帰った。



お母さんは俺の顔を見るなり、おかえりも言わずに言った。


「あんた、顔赤いよ?熱でもあるんじゃない?」

「そ、そんなことない」



親にさっきの話もできず、黙って二階に行こうとする。

すると、首根っこをつかまれた。



「待ちなさい!制服濡れてるじゃない!風邪ひいたんじゃないの?」



………え?

体が熱いのって、もしかして……。



熱を測ると37度5分。


…どおりでクラクラすると思ったら。




どう考えても、濡れた上に学ラン脱いで身体を冷やしたことが原因。


カッコつけて風邪ひいたとは親に言えず、大人しく7時には寝た。