「…ここかな?」


表札には『雪川』。

全力で走ったから息切れがひどい。



急いで呼吸を整えたあと、服装に変なところがないかチェックした。

…1時ちょうど。

よかった、間に合った……。



インターホンを押した。




ドアが開く。



「水原くん!」




雪川さんが笑顔で出てきた。

…可愛い。


いつもの私服よりも少し部屋着っぽくて、それがまたいい。



「これ、お土産」


来る途中に買ってきた、ケーキを渡すと、雪川さんはすごく喜ぶ。


「わ!これ美味しいケーキ屋さんだ!ありがとう!上がって!」

「おじゃまします」


靴はきちんとそろえないと。

1ミリでもズレたら、嫌われるかな………。


「お母さん、水原くんがケーキくれたよ!」

「あら!気を遣わせちゃってごめんなさいねー」


…これが雪川さんのお母さん。

やっぱり雰囲気が似てる。


どうしよう、もしこの人の気に触ることしたら、俺終わりかな……。



「初めまして、水原透です」


俺は緊張を押さえつけて、無理やり笑顔を作った。



「初めまして、ゆっくりしていってね」



お母さんは笑ってくれた。

よかった………!



「水原くん、わたしの部屋行こ!」

「う、うん」



お母さんに軽く頭を下げて、雪川さんについて階段を登った。