「…もういやや」


その言葉を、この一週間で何度聞いただろう。


この時間が来る度、十数分置きに呟かれる"もういやや"。

筆を動かす手が止まり、パレットが下がる。

眉間にしわを寄せて、キャンバスとにらめっこする背中には、何やら黒っぽいオーラが見えた。ように思う。


隣で、同じくらいの大きさのキャンパスに向かう俺からすれば

"もういやや"

と連呼されるその絵の、どの辺りが気にいらないのかまったくさっぱりわからない。


昨日は、上手くいったと笑った部位も、今日には別の色で塗り潰す勢いで筆を動かす。


"もういやや"
と呟くのも忘れずに。