「そうですが」

 私が答えると、彼は「やっぱり」と呟き。

「これ、幸助に渡すよう頼まれました」

 紙を差し出された。

 四つ折りにされた紙を開くと、そこには美里の話を裏付ける走り書きが残されていた。

【君がこれを読んでいるということは、何等かの形で俺が犯した罪について知ってしまったということになる。俺は、中学の時に窃盗罪を犯した奏太より、君を幸せにできるという自信があった。なのに君は奏太を選んだ。これが動機といったって、世の中には通用しないかもしれないが、俺は本気だった。けど、俺には殺す気なんかなかった。ただ、痛い目に遭わせれば懲りて奏太は君と別れると思っていた。なのに、まさか海に落ちたきり死んでしまうなんて思わなかった。俺は君を幸せにするどころか不幸にしてしまったね。こんな言葉だけじゃ世の中通用しないけど…】

 一番下に太い文字で【ごめん】と書かれていた。

 私は目頭を押さえた。

「本当…だったんだ」

 暫くしてからそう呟いた。

「…少しだけ、信じてたんだけどな」

 私は紙を渡してくれた店員さんと、幸助がどこに行ったか教えてくれた店員さんいお礼を言って店を出た。