「あの、お義母さんも若い頃に旦那さんをなくされたんですよね?なんで結婚しなかったんですか?」

 私が聞くと、奏太のお母さんは「うーん」と唸ってしまった。

「そうねぇ…。やっぱり、あの人が忘れられなかったかしら。それにね、あの人以上に好きになれる人がいなかったからかしらね」

 私は「そうですか」と言った。

 奏太のお母さんは何回も頷いて

「あなたはどうなの?」

 と聞いてきた。

「私は…―――好きな人はいないんですけど、付き合ってって言われて今、付き合ってます」

「自分の気持ち、大切にね。人生は一度しかないんだから。私は、あなたに幸せになってほしい。奏太は死んでしまったけれど、他の好きな人を捜したら?奏太はできなかったけれど、他の人ならあなたを幸せにできるから」

 私は頷かなかった。

 奏太のお母さんは私の顔を見て小さく微笑んだ。

「私は、あの人一筋で生きてきて結局幸せになれなかったから」

 私は今度は頷いた。

「わかりました」

「よろしい」

 数時間で打ち解けあった私たちは笑い合って別れた。