奏太の実家に着いた。

 門をくぐると、奏太のお母さんが玄関前を掃除していた。

「えっと…どちら様でしょう?」

 奏太のお母さんに言われて気付いた。

 そっか、私、奏太にプロポーズされたけどお母さんにまだ挨拶してなかったんだ。

 どうしよう。

「あの、そのぉ…」

 言葉を探していると、

「あ、あなたが海さん?」

 と聞かれた。

「え、あ、はい。そうです」

 私が答えると、奏太のお母さんは目に涙を浮かべて

「ごめんなさいね。奏太のバカ、あなたを置いてあの世に逝くなんて。本当にごめんなさいね」

 と謝罪した。

 私は首を振って

「謝らないでください」

 とだけ言った。