乾いた音が、静かな部屋に響いた。

「…っつ!」

 頬を押さえて私は父さんを見た。父さんは肩で息をしながら私を見て、それから首を振った。

「確かにお前の言う通りだ。俺は美千留の最期を看取ってやれなかった。だが、アイツのことは本当に好きだったし、大事だった」

 父さんは小さくため息をついた。

「じゃあなんで、母さんが死んだあと、いつもへらへら笑ってたの?なんで涙をこぼさなかったの?なんで――「海」

 言葉を遮られた。

「私には、わからないよ。父さんがなんでそんな平気そうなのか。私は、奏太が死んでしまってから作り笑いしか浮かべられない!涙が止まらなかった!それに――「海!!」

 父さんに怒鳴られて、私は口を閉ざした。

「平気じゃなかったわけないだろ」