そして私のすぐ目の前に立つと、囁いた。

 
 「セナ……っていうんだ」
 

 ふわっと漂うバニラの香りと甘い声が耳朶をくすぐる。


 「セ、ナ?」


 「そう。セナ」

 
 意地悪だった笑みが優しいものへと変わる。

 
 「萌花……。僕が君を可愛くしてあげるよ」


 優しい笑みを浮かべた謎の美少年。
 

 私は彼をただ呆然と見つめるしかなかった。